今日は十二月二十四日、すなわちクリスマス・イブ。
気分的には美味しい物を食べてパーっと遊び回りたい所なのだが。
「…何で大学に来てるんだろう、私」
「授業があるからだろ」
隣の席に座っていた久々知に至極もっともな返事を寄越され、現実を再び突き付けられる。
「クリスマスイブくらい、何の気兼ねもなく遊び呆けたい所だよね」
「それいつもだろ?」
「……」
全く、この男にはロマンの欠片も備わっていないのか。
イベントに心躍らせる女心を、少しくらいは解してほしいものだ。
…まぁ、一緒に過ごすような相手は私にはいないんだけれど。
自分で思ってて悲しくなってきた。思わず溜め息が零れる。
…授業、頑張ろうかな。
意味もなく、机の上でとんとんとノートやクリアファイルを揃えてみる。
特に変わった事をした訳ではないが、久々知はそんな私の動作をずっと見ていたらしい。
机の端に揃えた文具を置くと、それまで私の手元を追っていたらしい久々知の目が今度は私の目を捉えた。
「…なぁ、今から出掛けないか?」
「え、いや、授業は?」
「一回くらい、どうにでもなるだろ」
私も存外真面目な方であるが、私以上に真面目な久々知からそんな発言が聞けるとは思わなかった。
相変わらず、久々知の考えてる事は読めない。
どうすればいいのか考えあぐねて、じっと久々知の目を見つめ返してみると、私の言いたい事を感じ取ったのか、居心地悪そうに目を逸らされた。
「…そうしたいと思ったんだよ、何となく」
「……」
「…ほら、行こうぜ」
差し出された手は、私の意思を確かめている。
―――行くか、行かないか。そんなの決まり切ってる。
「!」
「どうしたの、行くんでしょ?ほらさっさと仕度仕度!」
その手を取って、ぎゅっと握ってみる。
私の無言の返事に驚いたのか、固まってしまった久々知をせっついて、私もさっと荷物を片した。
さぁ、これからどうしようか。





不意打ちロマンス

(予定なんて未定、そんなもんだろ?)