新婚さんごっこ〜竹谷の場合〜

家のドアを開けたら、に手厚く出迎えられた。
「お帰りなさぁい、あ・な・た!ご飯にする?お風呂にする?それとも…私にする?」
「あー…じゃあ先に風呂入ってさっぱりしてこよっかな」
「待ってハチそれより先にもっと言うべき事があるでしょ」
「うん?…あぁそうか、ただいま!そうだよなぁ、一人暮らししてるとなかなか言わないもんなー」
「そうじゃなくて!私がいる事にもっと驚いてよ!」
「あぁ、それもそっか!じゃ、先に風呂入ってくるわ」
「……結局スルーするんかい」



(新婚さんって、きっとこんな感じなんだろうなー…)
がお嫁さんか、いいなそれ。
そうなってくれたらいいなと、俺のこれからの人生設計に思いを馳せながら湯船に浸かっていると、
風呂場のドアが不意に開かれる。
「お背中流しましょうかー?」
「うわっ!ななな何だよ、いきなり開けんなよ吃驚するだろ!」
「あ、やっと驚いてくれた?」
は大成功、とにんまり笑うと、袖を捲りながら「あと髪も洗わせてね」と準備し始めた。



「はーい、じゃあ水かけるから目閉じてー」
「おう」
宣言通り、頭からぬるめのお湯がかけられる。
その後手早くタオルで髪の水分を取ってから、は言った。
「ん、じゃあ私ご飯の準備してくるから、後はごゆっくりー」
に背中と髪を洗ってもらった俺は、自分の仕事は終えたと言わんばかりに満足げな表情を浮かべて
出て行こうとする彼女を、ぎゅっと抱き締めた。
「なぁ、折角だから一緒に入ろうぜ」
「…ハチの所為で服びしょびしょになっちゃったじゃない」
「服なんて脱げばいいじゃん、ここは風呂場なんだしさ」