「先輩、これ僕達からのプレゼントです。皆で選んだんですよ」
「あーそっか、今日ホワイトデーだもんね。皆ありがとう」
委員会に行ったら、可愛い後輩達に囲まれて綺麗な包みを差し出された。
開けてみると、中から可愛い柄の風呂敷が出てくる。
「わぁ、すっごく可愛い!本当にありがとねー」
「いえいえ、喜んで頂けて嬉しいです」
「あぁもう皆大好き!」
「わっ」
「せっ先輩何するんですかぁ!」
なんて可愛い子達なんだ、この子達は。
がばりと思い切り後輩達を抱き締める。
滝には逃げられたけどまぁいいや、あぁもう本当に幸せ!
「…で、可愛い可愛い後輩達がちゃーんとお返しを用意してくれてるっていうのにアンタからは何もないの、小平太?」
金吾にしろちゃん、三ちゃんを抱え込みながら目の前の体力馬鹿を睨みつける。
「何言ってるんだ、俺だってちゃんと考えてあるぞ!」
「え、本当に?」
「ああ」
絶対忘れてると思ったのに、意外にも小平太はホワイトデーの事を覚えていたようだ。
一旦咳払いをして仕切り直すと、小平太は言葉を続ける。
「俺の名字、お前にやるよ」
「…は?」
小平太の名字?いや知ってるよ「七松」だけど、問題はそこじゃない。
名字をくれるって、それってつまり。
「いや、もうすぐ俺達卒業だろ?そしたら皆別々の道を行くんだし、こうやってお前と毎日顔を合わせる事も出来なくなるじゃん。それが何か嫌でさ、
どうすればいいのかずっと考えてたんだ。それで俺なりの答えを見つけた」
そこで小平太は言葉を切って私の手を取り、真剣な目で私の目をじっと見つめた。
「俺と一緒になってくれ、
「え、え…」
「俺はお前が好きだ」
小平太はいつもこうだ。いつも突然で、後先考えずにとにかく突っ走って。
でも、いつも自分の気持ちに正直で、感情を偽ったりしない。
「…わ、私も小平太の事、その、す、好きだよ…」
「マジで!?よっしゃ!」
今度は、私が小平太にがばりと抱き締められる。
「絶対幸せにしてやるからな!」
…もう十分幸せだなんて、悔しいから絶対言ってやらない。
(あれ、いつの間にか皆がいない…)



「俺の名字、お前にやるよ」
「…は?」
「なぁなぁこれってプロポーズだよな!?」
先輩どうするんでしょう、結婚するんですか、しちゃうんですか!」
「…お前ら、少し空気を読め」
「普段空気を読もうともしない先輩に言われたくありません」
「…その話は後でゆっくりと聞かせて貰うぞ、三之助」
ほら行くぞ、と先輩に背中を押され、僕達はその場を後にした。
(どうなるか見たかったのに!)





考えたのち、考えなし

(時には勢いだって必要)